2010年10月07日(木)
【メディカル】生物の利他行動をコンピュータ上のデジタル生物の進化モデルで解明!

進化論といえば適者生存・自然淘汰のダーウィンの進化論から始まりますが、自然淘汰説では働きバチなどの個体の生き残りを捨てて血族を残そうとする「利他行動」が説明できず、これを解決したのが第9回京都賞を受賞して日本でも知られた、ハミルトンの血族遺伝子の遺伝的適応度に関する「包括適応度」の理論です。
ハミルトンは自分と同じ遺伝子を持った血縁者を助けることによっても、自分の遺伝子を持った子孫を増やせることを数学的に証明し、「包括適応度」を上昇させるための「利他行動」の合理性を明らかにし、血縁選択説を根拠付けました。
こうした進化の理論は現実の生物を使用して実験することが困難であることから、どのように実証的に研究を進めるかが研究者の課題となっていましたが、米国・ミシガン州立大学のRob Pennock教授らの研究チームがコンピュータ上のデジタル生物で「利他行動」と血縁淘汰説の進化実験を行ない、その結果をProceedings of the Royal Society・Proceedings B 9月15日オンライン版に発表しました。
教授らは「利他主義遺伝子」を仮定した場合、この「利他主義遺伝子」がその利他行動で自身の子孫を増やすのかどうかを研究することを目的に、デジタル生物を①「血族、」②血族ではないが遺伝子レベルで血族以上の「類似度」を持つ、③「利他主義」を取り、その遺伝子を持つことが外からわかる印があるという、3つの関係を競合させて、デジタル生物の「利他主義遺伝子」の進化を観察しました。
その結果、デジタル生物は「利他主義遺伝子」の印を無視し、また血族よりも遺伝子のより類似するものを助ける傾向が強いことがわかりました。実験結果から研究チームは「利他主義遺伝子」も自分自身の複製(同じ遺伝子の子孫)に対してのみより、正確に利他主義行動を取ることが確認され、そして自己の複製を残すことに対する正確さというものは、利他主義遺伝子とその遺伝子が生み出す利他主義行動のレベルの両方を含まなければならないことがわかったとしています。
医療ジャーナリスト 宇山恵子
Proceedings of the Royal Society・Proceedings B 9月15日オンライン版
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