2010年08月15日(日)
[メディカル]バイオマーカーはがんの早期発見に有効ではない?!

バイオマーカー(生物学的指標)は、ある病気にかかっている場合や、その病気の重要度に応じて、血中濃度が変化するタンパク質のことを指し、病気の発見や治療効果を示す指標として注目されています。しかし四半世紀に渡って数多くの研究が行われる中、がんのバイオマーカーは、日常的に臨床の現場で使用できるほど、信頼性の高い精度にまで達していないのにもかかわらず、過大に評価されているのではないかという研究が報告されました。特にマスコミがバイオマーカーについて多大な期待を抱かせるような情報を流すことで、一般大衆に歪められた正しくない情報が伝わっていると主張しています。これは8月12日付のオンライン版Journal of the National Cancer Institute にカナダ・トロントのMount Sinai Hospital のEleftherios Diamandis博士らが発表したものです。
たとえばFDA(アメリカ合衆国食品医薬品局)によって、2009年に卵巣がんの早期発見のためのバイオマーカーとして承認された「HE4タンパク質」は、卵巣がんの再発率の予測には役立つものの、結論としては卵巣がんの早期発見には役に立たないことを指摘しています。また、現在最も頻繁に利用されている前立腺がんのバイオマーカーであるPSA(前立腺特異性抗原)でさえも、本当に前立腺がんの早期発見のためのマーカーとして有効かどうか、いまだに議論中であること現状なども紹介。またNMR(陽子核磁気共鳴)による悪性腫瘍発見の可能性に関しては、年齢、性別、食生活などに影響される脂質組成に影響を受けるために、がんかそうでないかを区別することが難しいと評価しています。このように、多くのバイオマーカーが、実際のところ、がんを早期発見するためのスクリーニング調査に、適しているとは言えないことを指摘しています。一方で腎機能の状態を知るための「血清クレアチニン」(血液中の老廃物で腎臓でろ過されて尿中に排出されるもの)、心筋梗塞などの心臓障害を検出するための「心臓トロポニン」(骨格筋、心筋にのみ存在するタンパク質で、カルシウムイオンに反応して筋肉の収縮を起こす)などは、臨床現場でも有効に活用されているバイオマーカーの成功例として評価しています。
博士らは、大切なことは、バイオマーカーを用いた検査が、がんによる死亡率を下げるかどうかということであり、情報を提供する際に、このことが欠落している場合が多いこと指摘。さらにバイオマーカー検査によって過剰診断になってしまい、治療の必要のないものまで治療が行われ、医療費のむだな支出を増やす可能性にも言及しています。
医療ジャーナリスト 宇山恵子
8月12日付 オンライン版 Journal of the National Cancer Institute
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