2010年07月03日(土)
[サイエンス]薬物が止められなくなるのは大脳シナプスの可塑性が失われることが原因

なぜある種の薬物だけが止められなくなってしまうのか、強迫的に薬物を求めてしまう薬物嗜癖の発症メカニズムについて、フランス・ボルドーにあるNeurocentre MagendieのPier Vincenzo Piazza博士とOlivier Manzoni博士の研究チームが、Science 6月25日号に発表した研究で明らかになりました。
Pier Vincenzo Piazza博士は2004年にコカインを使用してラットに人間と同様のコカイン嗜癖(中毒)が生じることを発見しましたが、今回のラットを使用した実験で快感、報酬、恐怖などに重要な役割を果たすとされている大脳の側坐核シナプスの可塑性が失われることで、嗜癖が生じることを発見しました。研究によると脳神経のシナプスには、長期抑圧と呼ばれる作用があり(長期抑圧は新たな記憶形成などに重要な働きをします)、コカイン嗜癖になってしまうラットは、コカインを長期間投与されることで、このシナプスの長期抑圧の可塑性が失われて、機能しなくなってしまうのだそうです。
博士によるとこのシナプスの長期抑圧が恒久的に失われることで、、コカイン使用行動が元に戻らないので、より強固になってしまい、強迫的な嗜癖行動へと駆り立てられていくのではないかということです。博士は今後の課題として嗜癖には至っていない薬物使用者の脳を研究することで嗜癖行動の治療に関する端緒が得られるのではないかとしています。
医療ジャーナリスト 宇山恵子
Science 6月25日号 "Transition to Addiction is Associated with a Persistent Impairment in Synaptic Plasticity"
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