2010年05月12日(水)
[サイエンス]鏡像(ミラー)運動症と大腸がん遺伝子変異の関係

10歳以下の子供によく見られる「鏡像(ミラー)運動」は、右手をグーパーすると左手も自然にグーパーしてしまうような反応で、指、手、前腕、足の指、脚などにみられます。通常は乳幼児によく見られ、10歳以下で消失するものですが、10歳を超えてもこの反応が起こる「鏡像運動症」に、DCC(Deleted in Colorectal Carcinoma=直腸結腸がん抑制)遺伝子が関係していることを、カナダのモントリオール大学やその周辺病院のフランス系カナダ人の科学者チームがつきとめ、4月30日号の“Science”に掲載されました。
興味深いことに、大腸がんの患者の約70%にDCC遺伝子の減少が見られ、このことからDCC(直腸結腸がん抑制)遺伝子と名付けられました。
実はこの遺伝子、ガン抑制遺伝子として大腸で発見されましたが、もともと中枢・末梢神経で発現し、ネトリンという神経回路の形成を誘導するタンパク質の受容体としての役割もします。
今回の研究の結果によると、鏡像運動症を起こす原因となるDCC遺伝子の変異は、ネトリン1という神経軸索伸長誘導因子(簡単にいうと、神経回路を伸ばそうと誘導するタンパク質)の欠損によって起こり、これが影響して神経細胞のネットワーク(神経回路)形成に不具合が生じ、それが鏡像運動反応を引き起こしてしまうのではないかということです。つまりDCC遺伝子は、大脳半球の左右分化に大きな影響力を持つことがわかりました。DCC遺伝子の変異は大腸がんの後期で発生することが多く、大腸がんの浸潤や転移を促進してしまいます。
医療ジャーナリスト 宇山恵子
Science 30 April 2010:Vol. 328. no. 5978, p. 592 DOI: 10.1126/science.1186463
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